コミックマーケット74アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)全館

会期
2008年8月15日(金)〜17日(日)

サークル数
参加サークル数3万5千
申込サークル数4万9千


入場者数
15日(金)17万人
16日(土)18万人
17日(日)20万人


更衣室登録数
 男性女性
15日(金)6124,076
16日(土)9413,452
17日(日)1,1862,318


コミケット公式発行物
  • コミックマーケット74カタログ(表紙、和々)
  • コミケットプレス28(表紙、羽間ファッジ)
  • 紙袋(大)三池・(小)千世真黒


マスコミ取材
 コミックマーケット74取材申込一覧



 今回、コミックマーケット74を無事に開催できたことを素直に喜びたいと思います。
 手荷物確認をはじめ、様々な形でご協力いただいた一般参加・サークル参加の皆さん、最善の努力を尽くしてくれた準備会スタッフに、感謝します。本当にありがとうございました。

 既にコミケットのWebサイトにおいて告知した「コミックマーケット準備会からの緊急のお知らせ」でも記しました通り、7月以来2ちゃんねる等でのコミックマーケットへの脅迫行為が複数ありました。この内「コミケ会場に手榴弾投げ込む」という書き込みについては、警視庁東京湾岸署に被害届を提出し捜査いただいた結果、コミケット74一日目、8月15日午前に犯人は逮捕されました。犯人については、刑事訴追のみならず民事での損害賠償請求を視野に入れており、現在弁護士とも協議を行っています。また、他の脅迫行為についても、どのように対応していくのか東京湾岸署と相談中です。このような脅迫行為を受けて、会場・警察からは「開催中止」について示唆も受けましたが、準備会としては「脅迫には屈しない、決して中止にはしない」という返答を行い、実際無事コミケットが開かれたわけです。今後とも脅迫行為には毅然たる姿勢で臨むとともに、開催の継続を目指していきますので、全ての参加者のご理解とご協力をお願いします。

 そして、この脅迫行為及び昨今の様々な事案が発生している状況において、会場・警察より強く求められたのが、参加者の手荷物確認でした。コミケットがコミケットたりえているのは、参加者の自主性を尊重し、参加者と準備会との信頼関係があればこそです。実務上の様々な問題点もさることながら、手荷物確認という行為そのものが準備会の側からこれを壊すことになりかねず、大いに悩みました。会場・警察とは再三の交渉を行い、準備会スタッフ間でも慎重な議論を重ねて、今回の形をつくっていきました。ひとつだけ象徴的なお話をさせていただくとすれば、マスコミ報道等で「手荷物検査」という言葉が一人歩きしてしまいましたが、今回の対応において、準備会としては一度たりとも手荷物「検査」という言葉は使っていません。準備会のスタンスとしては参加者の皆さんを「検査」などしたくはなく、敢えて「確認」という言葉を使いました。

 次に、手荷物確認とともに参加者の皆さんに負担をおかけしたのが、エスカレータの問題でした。直前のイベントでの事故を受けて、エスカレータの運用を大幅に変更せざるを得ませんでした。事故を起こしたエスカレータの運用が停止されたのは致し方ないことではありますが、製造会社も異なるのに、距離の長い空中エスカレータという共通項のためだけに、会議棟3−6エスカレータの運用が会場側で停止されたことで、男子更衣室・有料休憩室への導線が甚大な影響を受けました。加えて、会場側からは運用する全てのエスカレータの上下に開催期間中常時準備会スタッフまたは警備員を必ず配置するように、という依頼もありました。これは、人員的にも経費的にも許容できるものではなく、仕方なく東地区においては、主導線として利用しているエスカレータ以外のエスカレータの運用を中止しました。
 稼働していたエスカレータにおいても、会場側より乗降人数への制約が求められ、通常のコミケットよりかなり減らした利用率での運用を余儀なくされました。件の事故の後、会場側にはコミケット準備会のエスカレータに関する安全対策について詳細な説明を行い、過去事故が起きていないことも確認したのですが、事故直後ということもあって、受け容れられませんでした。その結果、今回の西4階の企業ブースからの下り導線、東・西地区間のコンコース・ブリッジの大混雑が引き起こされたわけです。警備に当たっていただいた警察の方も、今回から深川署から4月に新設されたばかりの東京湾岸署に所轄が変わったため、ビッグサイトの勝手やコミケットの規模がまだわからないように推察されるところもありました。そのため、個別の混雑についての指導を受けたものの、全体最適という観点からは必ずしも適切でない場合もあり、調整に手間取る局面も少なくありませんでした。今回起きた様々な問題点については、次回の開催に向けて、一つ一つ解決していく必要があります。

 こうした思いもかけないトラブルに翻弄され続けた夏のコミケットだったわけですが、本来の最大のトピックは、「会場の使い方の見直し」を受けてのコスプレ広場の移動と企業ブースの拡大だったはずでした。
 コスプレ広場については、これまで屋上展示場というある意味ビッグサイトの中でも最も遠い場所を解放して行われていたものでしたが、1Fレストラン街外庭園という今回の場所は、多くの参加者にとって非常にアクセスしやすいところでもありました。東・西地区間通行が大混雑する中、更衣室からのコスプレ広場への移動が厳しい状態となり、さらに、これまでコスプレ広場を訪れたりしなかった参加者がコスプレ広場に足を運んだことにより、予想をはるかに超える混雑が生じました。途中から導線を見直したり、二日目からはこれまでの屋上展示場もコスプレに開放したりして、混雑の緩和に努めた結果、相当の効果がありましたが、次回に向けてさらに検討・対策を進めていく必要がありそうです。しかしながら、コスプレイヤーと撮影者だけがコスプレを楽しむのではなく、他の参加者にとってもコスプレを身近に感じることができたということそれ自体は、思いがけないことではありましたが、大きな成果であったと言えるのではないでしょうか。
 企業ブースについては、拡大に伴って参加企業数をさほど増やさず、通路幅の拡張等安全の確保に重点を置いたため、会場・警察・消防等から危険性を指摘されるほどの状況は回避されましたが、ピーク時の混雑は、やはり相当厳しいものがありました。今後も安全には十分気を配りながら、運営していく必要があります。

 安全という観点で最後に付け足すならば、昨年に引き続きの猛暑により熱中症にかかる方が多数いらっしゃいました。救護室・ビッグサイト外の場外救護詰所の処理能力は、一日目、二日目で限界近くに達し、さらに来場者が増えることが予想される三日目の状況を危惧し、急遽有明ワシントンホテルの宴会場を借りて、場外救護用のスペースを確保しました。この準備は、三日目がそれまでとはうって変わって涼しい気候になったため、結果としてはあまり意味がなったのですが、夏の熱中症対策は今後とも大きな課題です。また、天候の不安定さでサークルの方々にご迷惑をおかけしたのが、宅配便です。二日目の夕立で雨シフトに移行したため、待ち時間が長くなってしまいました。

 このようにコミケットは、楽しいイベントではありますが、決して楽なイベントではありません。フィクション・ノンフィクション問わず、様々な形でコミケットが取り上げられ、その楽しさはある種自明のものとして扱われていることが多いのですが、一方で楽ではない部分はなかなか描出されません。一般参加者の対応をしている準備会スタッフに話を聞くと、十分な暑さ対策をしてこない、行列につぐ行列に途方に暮れてしまう、といった方も少なくないようです。これを当人の覚悟が足りないと責めるのではなく、そもそも「コミケットはしんどいところなのだ」という情報を準備会がきっちりと提供できていないことを問題視する必要があるのかもしれません。もちろん、前提として準備会は可能な限り全てを受け容れることを今後も追求していきますが、この場所が楽しいばかりではないこと、むしろ大変なことも多いこと、参加者として守ってもらいたいモラルがあることを説明していく必要があると考えています。コミケットに参加するための必要情報をまとめたカタログの諸注意部分や、参加者の参加者による参加者ためのノウハウの固まりでもあるマンガレポートを、この夏からコミケットのWebサイトで公開をはじめたのも、そうした試みのひとつです。

 今回、脅迫事件犯人逮捕の報道を含めTVの放送を見て改めて認識したのですが、コミケットを報じるにあたり、もはや注釈も説明もほとんどありません。TV局にとって、コミケットは、マンガ・アニメ・ゲームの世界の大きなイベントとして当たり前の存在として認識されているようです。とはいうものの、まだまだ「ズレているな」と思うことも少なくはないので、取材に対しては丁寧に正確なイメージを伝えていく必要があります。そして、今回も突っ込んだ取材が来ています。NHK関連では、インドのドキュメンタリー監督が日本のマンガ・同人誌・萌えの表現に興味を持ち、この春から断続的に長期取材を行っており、夏コミケ当日も3日間じっくりと撮影を行っていました。

 また、マスコミ関連では、別部門がコミケットとは全く関係のないトラブルを起こした企業が企業ブースに出展していたのですが、それに対するデモを呼びかけるような動きがネットでありました。これについては、何事も起こりませんでした。同様に、児童ポルノ法改定に対する反対署名活動にも事前に嫌がらせがありました。こちらも、無事問題なく多くの署名を集めることができました。
 最近いわゆる「電凸」という行為が目につきます。コミケット関係でも様々な「電凸」があります。コミケットを快く思わない一部の方々が、各方面に様々な「電凸」に及んでいるのは行為としてはまだわかりますが、「緊急のお知らせ」の文面に関連して、参加者と思われる方が警視庁にまで細かい「電凸」をするのは、さすがにいかがなものかと思っています。最初に述べたとおり、コミケットは準備会と参加者との信頼関係の上に成り立っているわけですが、参加者に準備会が信頼されなければならないと同時に、準備会も参加者を信頼しなければなりません。
「コミックマーケットをとりおこなうのはすべての参加者であり、内実を作っていくのも全参加者である」といういにしえよりの言葉を今一度改めて確認して、いろいろな意味であまりにも「あつかった」この夏のアフターレポートを締めくくりたいと思います。
(2008年9月23日)

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