コミックマーケット81アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)全館

会期
2011年12月29日(木)〜31日(土)

サークル数
参加サークル数3万5千
申込サークル数5万1千


入場者数
29日(木)15万人
30日(金)17万人
31日(土)18万人


更衣室登録数
 男性女性
29日(木)1,3745,847
30日(金)2,5675,966
31日(土)1,9593,506


献血数
29日(木)552人
30日(金)530人
31日(土)452人


コミケット公式発行物


マスコミ取材
 コミックマーケット81取材申込一覧

(2012年1月11日データ部分公開)


 ここ数年、比較的に穏やかな天候に恵まれている冬のコミケット。この冬も、救護室利用者がそれほど多くはなく、参加者にとっては過ごしやすいコミケットとなりました。

 一日目は、ジャンプ系、ゲーム系、芸能系が中心です。アニメ化で人気となった『うたの☆プリンスさまっ♪』に注目が集まりました。二日目は、東方Project、アニメ系、その他のマンガ系、女性向けの創作系という構成。「東方とタイバニを同じ日にするなんて!」というご意見もいただきましたが、曜日毎の抽選率をなるべく同じくするための調整の結果とご理解ください。その『東方』ですが、規模の面でも人気の面でも他ジャンルから一頭地抜けていることもあって、東地区の片側にまとめると入場と混雑のバランスが取れなくなってしまいます。この冬はジャンルを2つに分け、主に音楽系を東3ホール、それ以外を東6ホールに配置し、混乱を回避しました。三日目は、男性向、創作少年、ギャルゲー系、同人ソフト、デジタル(その他)他という組み合わせ。デジタル(その他)のニコニコ動画系のサークルの元気の良さが印象的でした。

 これらの全てサークルの情報を収めているのがカタログですが、この冬より、CD-ROM版(2枚組) からDVD-ROM版(1枚)となりました。また、スマートフォンの普及が急激に進み、公式アプリとして、よりハンディな形態が求められているのは認識してはいます。とはいえ画面に注意を奪われて前を見ない方や、携帯ゲームに夢中のあまり準備会スタッフの話を聞いていただけない方が、少なからずいらっしゃるのも現実です。準備会の公式刊行物が、こうした状況を加速しかねないことに、躊躇があるのも正直なところです。

 さて、夏コミと冬コミを比較するとき、夏と冬で同じか、夏の方が冬よりも大きな値を示すものが大半の中、ほとんど唯一逆転があるのが、更衣室の登録人数です。冬は寒ささえ我慢すれば何とかなりますが、制汗や脱水の問題など、夏のビッグサイトの暑さはコスプレには過酷な環境です。それゆえ、夏コミケはコスプレイヤーの皆さんにはやや敬遠されがちなところがあります。また、昨夏のコミケット80は、東日本大震災後最初のコミケットでしたし、コスプレの規制緩和初回ということもあり、「どこまで何ができるのか?」と模様眺めのところもあったのかもしれません。コスプレイヤーの数はいったん減ってしまいました。
 ところが、昨夏のコミケット80での規制緩和が大変好評だったこともあり、一転してこの冬のコミケット81は、前回比で23%増、前年比でも14%増の過去最高の更衣室登録人数となりました。しかも、レセプションホールが、東京ビッグサイトの改修工事で使えないため、女子更衣室には会議棟6階を使用したのですが、登録数は約2割増えているのに、面積は約2割減という厳しい状況。この結果、特に1日目の女子更衣室の着替えには長時間コスプレイヤーの皆さんをお待たせすることになり、申し訳なく思っております(なお、2日目以降は運用を見直しましたので、待ち時間をかなり短くすることができました)。ビッグサイトの大規模改修工事に合わせて、場所を転々してきた更衣室ですが、次回はようやく従来の体制に戻すことができます。しかし、更衣室での着替えに加えて、コスプレ広場の混雑も目立っており、コスプレイヤーの増加に合わせた新たな対応をするべく、次回に向けて準備会内でも検討を始めているところです。

 会場全体の混雑の問題においては、かねてより問題視されていたのが、東西を結ぶブリッジとそれにつながるコンコースの混雑です。特にブリッジは天井の低さもあり、混雑だけでなく息苦しさを感じることもあり、参加者の皆さんから特に改善を求められていた点でもあります。続くコンコースの混雑は、西4階企業ブースから退出する導線とも繋がるため、西4階の混雑の緩和や安全の確保という意味でも対策が必要でした。一方、東駐車場においては、各駅からの一般参加者を誘導し続けることが大変なこともあって、決められた時間以降は、やぐら橋を渡りエントランスホールを経由して会場内に入るルートに一般参加者を誘導していました。このため、東駐車場に入れなかった一般参加者の方が東地区に行きたい場合も、コンコース・ブリッジを通らなければならず、このことも東西間交通の流量を増やす原因となっていました。
 今回、上記に対して2つの新しい対策を取りました。ひとつは『移動お勧めルート』の積極運用です。東のタクシー展開場と西2番ゲート(西地区の奥にある西駐車場へ車両が入る門です)の間を横断歩道経由で移動するこのルート。サークル向けには、開会前・搬入時間帯に限って使える『移動お勧めルート』として、「コミケットアピール」の「会場案内図」には掲載してきました。今回この道を開会後しばらくしてから、全参加者が利用できるようにしました。これにより、コンコース・ブリッジの流量をさげることができました。もうひとつは、東駐車場を閉鎖せず東駐車場側からの一般参加者の入場を継続しました。いずれの対策も、コミケットカタログ入稿後に詳細な運用が確定したため告知が間に合わず、残念ながら後者はこの冬の段階ではあまり効果はありませんでした。次回に向けては、カタログによる告知等を図り、運用方法もさらに改善していきたいと考えています。

 というわけで、コミケット全体としては大きなトラブルはなかったわけですが、細かいトラブルがなかったではありません。特に会場のエスカレータが2度ほど停止してしまったことは、安全にも関わることですので、簡単にご報告しておきたいと思います。コミケの参加人数で会場のエスカレータを酷使すると、安全装置が働いて停止すること等が以前から何度か発生しています。今回は、落とした企業ブースパンフレットやマフラーを巻き込んだりしての停止が発生しました。皆さん沢山の荷物を抱えているとは思いますが、気をつけていただきたいと思います。その他安全面では、東日本大震災を受けての防災訓練を今回も行いました。設営日には東地区を中心に昨夏よりも規模を大きくして実施したのに加え、二日目の夜には西4階企業ブースでも行いました。こうした実地訓練を行うことで、準備会内部の危機意識と状況への対応力の向上に取り組んでいます。

 別のトピックスとして、今回大きな話題を呼んだのが、日本赤十字さんとコミケットとのコラボレーション「献血応援イベント」でした。冬に限って会場及び国際展示場駅にて実施されている献血は、年末年始の献血が少ない時期の関東及び近県の輸血用血液の多くをまかなっているそうです。今回の新企画は、コミケ当日の献血車及び年明けの都内献血ルームで400mL献血をすると、ご協力いただいた西4階出展企業さんのポスターがもらえるというもの。10代・20代の若い層からの献血やはじめての献血の人が非常に増えたそうで、日本赤十字の担当者の方は大変喜んでおられました。短期間のお願いにも関わらずご賛同いただいた、アルケミスト、TYPE-MOON、ねこねこソフト、OVERDRIVE、みなとソフト(順不同・敬称略)の各社には、改めてお礼を申し上げます。

 続いて取材についてですが、年末開催が定着したこともあってか、TV局の取材は少し減りました。その中では、レポーターの「今日は何をしに?」という問いかけに、コスプレイヤーの男性が「コスプレですよ。何をしにって、愚問にもほどがある」と答えていたニュース映像が、ネットを中心にウケていたようです。また、変わり種では、震災・原発事故による日本への観光客減少対策のための、外務省関連の海外向け広報ビデオの撮影という取材もありました。

 こうした各種の外部からの取材が、コミケットに対して様々な角度でフォーカスを当てています。それとは別に、我々準備会自身が自らの現状を再認識するとともに、明らかになった実相を世の中に向けて情報発信していこうという企画が、2010年8月にコミケット78を対象とした「コミックマーケット35周年調査」でした。東京工業大学を中心とするコンテンツ研究チームと共同で行ったこの調査は、サークル参加者、一般参加者、スタッフ参加者に対して、2004年の「30周年記念調査」を下敷きに調査項目を追加し、より大規模に行われました。その結果のサマリーは、コミケット81カタログに収められており(その後準備会公式サイトにPDFファイルを掲載)、詳細版は近日東工大のサイトで公開される予定です。結果の一端をここで披露しますと、1)サークル参加者の約1割がクリエイタ及びコンテンツビジネス関係者である、という驚きの数字から、2)成年向作品を発行しているサークルは全体の3割少々なこと、3)男女とも平均年齢が20代後半〜30歳前後なのに、既婚率が男性サークル参加者で9.4%、女性スタッフ参加者で17.0%(これでも高い方の数字です)という余り笑えない結果まで、面白いデータが満載です。

 準備会としては、コミケットに注がれる外部からの不信の視線の多くは、コミケットのことをよく知らないが故のものであると思っています。そして、参加者の皆さんに繰り返し「断る自由もあるが、なるべく取材を受けてほしい」とお願いしているのも、皆さんがそれぞれ自分の言葉でコミケットを語ることが、ディテールに厚みを持たせ説得力を高めていくことに重要だから、と考えているに他なりません。電通がオタクを専門に研究する部署(?)を作ることが報じられるなど、未だオタクの消費行動には熱い視線が注がれています。隠れるような場所はどこにもありませんし、同人誌即売会の中に閉じこもっていたとしても、隠れたことにはなりはしません。であるならば、コミケットはどういう場所なのか、どういう人たちがこれほど多くなぜここに集まるのか、それが、どのようなインパクトをこの国のサブカルチャーに与えているのか……。こうしたことを包み隠さず明らかにし、たとえ負の部分があったとしてもプラスの部分がそれを上回っているからこそ、この社会の中で同人誌の世界、ひいてはコミケットがその存在価値があるのだということを語っていく必要があります。おごり高ぶることなく地道に仲間を増やしていく努力を続けて行きたいと思います。
(2012年3月22日本文公開)

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