コミックマーケット82アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)全館

会期
2012年8月10日(金)〜12日(日)

サークル数
参加サークル数3万5千
申込サークル数5万1千


入場者数
10日(金)16万人
11日(土)19万人
12日(日)21万人


更衣室登録数
 男性女性
10日(金)1,0554,051
11日(土)1,9945,828
12日(日)1,7262,930


コミケット公式発行物


マスコミ取材
 コミックマーケット82取材申込一覧

(2012年8月19日データ部分公開)


 暑い夏でした。そしてまた、猛暑は――かつて台風が進路を曲げた時のように――コミケットを避けていきました。以前より、開会時間前のビッグサイト通路内への一般参加者列の前倒し入場や、東駐車場待機列での容易な水分補給を可能にするためのケータリングカー増強、といった熱中症対策を進めてきたコミケットですが、それでも開催前の各種打ち合わせでは、警察・消防・会場、その他関係者の皆さんから、この夏の猛暑ゆえのご心配をいただきました。公式サイトでは熱中症対策についての注意喚起のページを開催直前に公開しましたが、準備会としては最近増えているコミケット初心者の方に向けて作ったつもりです。なぜなら、コミケットを経験している多くの参加者の皆さんはたいてい、コミケットの過酷な環境に備えて既に他のイベントよりも事前準備を心がけておられるに他ならないからです。
 「備えあれば憂いなし」の言葉のままに、当日は無難な天候に恵まれました。初日はさわやかとすら言える天候でしたし、2日目も事前の雨予報にも関わらず乗り切りました。3日目朝からのぐずついた天候は、11時頃、一瞬のゲリラ豪雨をもたらしましたが、それが過ぎた後は全くの快晴。結果、この3日目の午後が一番暑かったように思われます。おかげで熱中症に倒れた人もさほど多くはありませんでした。

 猛暑の代わりと言っては何ですが、このコミケット82最大のトラブルとなったのは、JPの搬入の問題であったことは言うまでもありません。これは、これまでブロック毎に仕分けして荷物を搬入していた郵便事業株式会社(当時)が、このコミケット82においては、ホール単位でサークル名の五十音順に仕分けを行ったことに起因します。このような変更は、事前に準備会側に知らされておらず、設営日夜の搬入時間帯に西地区で発覚しました。西地区はそれを受けて、今まで通りのブロック毎に仕分けをし直しましたが、東地区は対処が間に合わず、1日目の朝に荷物の引渡が案の定滞り、大混乱が引き起こされる結果となりました。1日目東地区のサークルの皆さんには改めてお詫びを申し上げます。
 当然、2日目以降についての改善を郵便事業株式会社に申し入れましたが、既に五十音順にカゴ台車に梱包が積まれている状態であり、会場到着前の改善は不可能という返答。仕方なく、夜に荷物を搬入してもらい、手が空いたり、居残ってもらったりした準備会スタッフ数百人がかりで、並べ替えを行いました。1日目夜はトラックや運転手の手配も足りず、最終的には午前0時近くまで時間がかかりましたが、2日目夜はその点も改善され、午後9時半には作業を終えることができました。コミケットにおいて、午前0時まで多くのスタッフが居残ることになったのは、1998年の時限発火装置による放火事件以来のことになります。サークルの皆さんのスムーズな頒布のためには、準備会スタッフは苦労を惜しみませんし、久々の大きなイレギュラーな事態に、スタッフ魂を燃え上がらせた者も少なくなかったようです。
 こうして、当日は人海戦術でなんとか乗り切りましたが、今回のトラブルの原因究明を行い、再発防止をどうしていくかについては現在、コミケットと日本郵便株式会社(合併後社名変更)にて協議を重ねています。民間企業として効率化を求められる日本郵政としては、コミケットの膨大な荷物のためだけに人員を確保し、倉庫を調達し、仕分けを行い、積み替えを行うのは、現状の荷物ひとつにつき100円の手数料では見あわない、という現実もあるようですが、なるべくサークルの皆さんにこれ以上負担を掛けることなく、スムーズな運営が行われるよう、働きかけを行っています。

 トラブルとしてもう一つ挙げておきたいのは、違法駐車の問題です。コミケットではサークルの皆さんに向けては駐車場を可能な限り(台数が多い日は申し訳ありませんが抽選となっています)用意し、それ以外の参加者の方には、車での参加をご遠慮いただき、公共交通機関の利用をこれまでも呼びかけてきました。にもかかわらず、車での来場・違法な路上駐車が後を絶たず、当日は警察による取り締まりも厳しく行われています。さらに今回は、ビッグサイトの先にある鉄鋼埠頭の企業の出入口前に路駐して、車両の通行を阻害してしまった参加者がいました。コミケット側にクレームが寄せられ、ガードマンの巡回を増やすなどの対応をとることになりました。コミケットの規模が、周囲の皆さんに様々な迷惑をかけすることは決して少なくなく、クレームを受けることもしばしばありますが、これは、避けられるクレームというか、ただ単に常識がない行為です。規模が大きければ大きいほどマナーは問われやすい、ということを今一度認識してほしいと思います。

 また、当日への影響はあまりありませんでしたが、設営日の午前中に、2ちゃんねるの掲示板に、コミケット参加者殺害に関する書き込みがありました。発見後すぐに警察に通報し、ガードマンを主体として一般参加者待機列の巡回強化を行いました。2008年8月の脅迫事件においても明言しているとおり、コミケットとしてはこのような脅迫・開催妨害行為については、警察に通報、被害届を提出し、毅然とした対応を取ります。コミケット82の開催後も、警察に改めて事情を説明し被害届を提出しました。しかしながら本件は、他人のパソコンを遠隔操作して脅迫行為を行った一連の事件と関連があるようで、現時点でも真犯人の逮捕には至っていません。

 その他、大いに困惑させられたのは、設営日前夜にビッグサイト周辺での本のゲリラ頒布がネットで予告された一件です。ネットでの批判も大きかった上、権利者からのアクションもあったようで、頒布は中止されました。路上販売は道路等の使用許可に関わる問題があり、加えて、深夜の未成年者外出がことさらに取りざたされる危険性があります。そして、開催直前の会場周辺での行為ということで、当日会場で見本誌が提出されていないものにまで、コミケットに対する道義的な責任が問われる可能性があります。企画の当事者は、面白がっての行為だったとは思いますが、本の内容、頒布方法、告知方法すべてにおいて、責任が取れない行為だったと言わざるを得ません。
 以前のアフターレポートにおいて「ネット文化にありがちな、即物的・脊髄反射的な『ネタ』の発露が、コミケットでも増えてきている印象があります」と、サークルの『奇抜なグッズ』を例に苦言を呈したことがありましたが、このゲリラ販売もそうした流れにあるものでしょう。しかし、これに限らず、単なる『ネタ』が大事になることは、ネットでもコミケにおいても、枚挙に暇がありません。結果に対する想像力を働かせてほしいと思います。
 とはいえ、最近は企業すらが、マーケティングとしてネタに走るので、こういうところでも同人と企業の区別が曖昧になったのかと、正直微妙な気持ちにもなったりします。コミケの会場にピザを宅配するというのは、それは「オイシイネタ」かもしれません。けれども、他の団体が管理している敷地へ、しかも大変な混雑で安全が優先される状況下に、店員に配達をさせることが可能であると、当方への一切の断りもなく告知することが「問題がない」「面白ければOK」という発想には正直ビックリでした。
 これ以外にも、コミケ開催直前のタイミングで『コミケ奨学金』などというサービスを告知する企業もあり、これに対しては抗議を行い、名称の変更をしていただきました。この「奨学金」については名称もさることながら、「企業が個人の同人活動を金銭的に支援する」という内容そのものが、受給者のコミケットへのサークル参加を不可能にするおそれがあったことも、準備会としては問題視せざるを得なかった点でもあります。

 さて……、トラブルやら問題の話ばかりが続きましたので、それ以外の話もしていきましょう。

 昨年は東日本大震災に関連して中止となった東京湾大華火祭が今年は開催され、コミケ2日目とぶつかりましたが、ほとんど影響はありませんでした。お台場地区は、今年ダイバーシティがオープンし、再びお台場の大地にガンダムが立ち、フジテレビでは毎夏恒例のお台場合衆国が開かれました。有明地区は、有明そらスタジオというアトラクションスペースが期間限定で運営され、有明コロシアムでボリショイサーカスの公演があり、防災公園には“そなエリア東京BBQガーデン”というバーベキュー場ができました。さらに、深川地区では、こちらも震災で1年延期となった富岡八幡宮例大祭が行われ……、といった具合に、コミケットの期間中、周囲で各種イベントが盛りだくさんに開かれていましたが、これらに関連したトラブルも起きませんでした。今後、築地市場の豊洲への移転が行われれば、今度は冬コミに影響するおそれもあり、ビッグサイトの拡張計画とも合わせて、夏・冬ともに周囲の動向には、今まで以上に気を配っていく必要がありそうです。
 震災と言えば、その影響もあってか、昨夏・昨冬と少々来場者が減ったコミケットですが、この夏は、2009年、2010年とほぼ同等ののべ56万人が来場しました。一方で、お盆前の金曜日という日程は、社会人が休みにくいという声を数多くいただいてもいます。すべての参加者が満足できるような開催日程はありえませんし、夏から冬の準備期間の短さやビッグサイトのそもそもの利用状況、といった様々な要素の最大公約数として、何が実現可能なのか現在検討を続けています。

 当日のサークルの傾向ですが、1日目はアニメでは『TIGER&BUNNY』や『ポケモン』、ゲームでは『うたの☆プリンスさまっ♪』といったジャンルが賑やかだった一方で、2日目、ジャンプ系同人では、久々の大ヒットとなったのが『黒子のバスケ』。4月からのアニメ化を受けて人気が急上昇。この夏のコミケット82に『黒子のバスケ』で申し込んでいるサークルは、2月に申し込んだサークルだけですから数も限られ、そこに多くの一般参加者が集中、当日は大混雑となりました。3日目は、昨秋からアニメが放映された『Fate/Zero』が女性の支持を得て、通常の3日目ジャンルとは異なった盛り上がりを見せていましたし、男性向では、いわゆる『モバマス』が広い支持を集めました。
 男性向では、昨冬から抱き枕での表現の問題をサークルの方々に指摘し、必要に応じて販売停止の対応を取っているのですが、この夏も少なくない数のサークルにおいて、そうした措置が行われました。コスプレROMの時と同様に、浸透するのにはなかなか時間がかかりそうですが、実写やフルカラーのリアルな描写については、より問題となる可能性が高いということを、再三再四となりますが繰り返しお伝えする次第です。

 一方、企業ブースでは、従来のマンガ・アニメ・ゲーム及びその関連企業とは色合いを異にした、「異業種」とでもいうべき企業の出展が多くみられたのが今回の特徴でした。自治体(鳥取県)、ITネット企業(Google)、飲料メーカー(サントリーフーズ)、スポーツ(新日本プロレス)、アパレル(earth music & ecology)と多種多様な業種・企業・団体の出展は、コミケットを活用したPR効果について、外部の認知が進んでいることを示しています。これまでの出展企業にもこうした動きに刺激を受けて、新しい試みに挑戦していただくことを、準備会として期待しています。真夏ということで当日会場では献血を実施しませんでしたが、昨冬に続きこの夏も行った日本赤十字社とのジョイント企画「献血応援イベント」等とも併せて、真面目に面白がっていきたいと考えています。

 また、昨冬の大幅なコスプレイヤーの増加をうけて、この夏からコスプレ広場の拡充を進めている準備会ですが、その第一弾として解放されたのが、入場待機列解消後のエントランスプラザ。オーロラビジョンの下、見上げれば逆三角形の会議棟の異形が写る格好のロケーションは、コスプレイヤーの皆さんにも大好評だったようです。次回冬は、このエントランスプラザに加え、なるべく広い場所でコスプレイヤーを受けいれていくことを検討していますので、「カタログ」や「ちぇんじ」による告知をお待ちください。

 こうした、当日の様々な活況をつないでいく導線ですが、東西間の新しいバイパスとしての移動お勧めルートも、認知が進んできたようです。せっかく参加したコミケット、混雑に揉まれるのもひとつの体験ではありますが、なるべく安全でスムーズな移動が可能になるよう、準備会としても知恵を絞っていますので、皆さんのご協力をいただきたいと思います。

 それにしても、通常に比べ様々にイレギュラーなことが起きたこの夏だったように思います。そして、改めてこう眺めてみると、その大半がコミケット内部にクローズしている事象ではない、ということに今さらのように気付かされます。コミケットは、その大きさと内在しているパワー故に注目も集めますし、場合によっては軋轢を生むこともあります。善かれ悪しかれ、社会の中でこの図体の大きさを隠すことは難しいでしょう。コミケットが様々な取材に窓を開いているのも、コミケットに実際に見てもらい、体験してもらい、理解してもらうのが、回り道のように見えて一番の早道だと考えているからです。
 お届けするのがだいぶ遅くなってしまった、夏コミのアフターレポートですが、既に11月2日には冬の当落通知が公開・投函されただけでなく、新しい試みである「コミケWebカタログ」がこの冬からスタートしています。今回は、β版としての提供となりますが、この新しいメディアをサークルが、一般参加の皆さんが、そして、準備会自身が、どう使っていくことになるのか、そして、コミケットがどう進んでいくのか、走りながら一生懸命考えているところです。是非皆さんからのご意見をお待ちしています。
(2012年11月15日本文公開)

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