コミックマーケット83アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)全館

会期
2012年12月29日(土)〜31日(月)

サークル数
参加サークル数3万5千
申込サークル数5万1千


入場者数
29日(土)17万人
30日(日)17万人
31日(月)21万人


更衣室登録数
 男性女性
29日(土)1,6635,267
30日(日)2,4116,369
31日(月)2,1874,169


献血数
29日(土)499人
30日(日)451人
31日(月)486人


コミケット公式発行物


マスコミ取材
 コミックマーケット83取材申込一覧

(2013年1月10日データ部分公開)


 昨冬のコミケット83のアフターレポートの冒頭にあたり、参加を見合わせていただいた『黒子のバスケ』サークルの皆さん、『黒子のバスケ』の同人誌・グッズ等の頒布についてご遠慮いただきましたサークルの皆さん、そして、これらの頒布物を楽しみにしていらした一般参加者の皆さんに対して、コミックマーケット準備会として、重ねてお詫び申し上げます。

 詳しい経緯については、開催直前の緊急告知「コミックマーケット83における『黒子のバスケ』サークル・頒布物対応に関する緊急のお知らせ」をご参照いただきたいのですが、ここにも改めて概要を記載させていただきます。
 2012年10月12日に原作者の母校である上智大学に、硫化水素が発生する薬品と脅迫状が置かれたことから端を発したこの事件ですが、その後、各所に多数の脅迫状が送付される事態に発展しました。同人誌即売会も例外ではなく、10月末には、準備会宛にも脅迫状が送付されました。それ以前から、準備会は会場側とは協議を行っており、いったんは、2008年夏のコミケット74の脅迫対応と同様の、警備強化と一般参加者の皆さんへの手荷物確認を実施し、会場及び参加者の安全を確保することで、会場・警察との合意が成立していました。
 ところが、他主催によるオンリー同人誌即売会の中止やジャンプフェスタにおける関連イベントの中止が発表される事態を受けて、会場・警察より、当該作品のサークルの参加見合わせ及び同人誌・グッズ等の頒布を中止する以外の選択肢がないような、非常に厳しい要請を受けることになりました。準備会としては、このような脅迫犯の要求に屈する悪しき前例を残さないため、一層の警備強化等の対応策を講じた上での通常通りの開催を強く求めましたが、会場から、今後のコミケットへの会場利用の調整が非常に厳しくなる可能性を示唆されるに至り、表現の場を確保するため、誠に残念ながら今回の決断をすることになりました。
 当日は、上記緊急告知と併せて発表した「コミックマーケット83における警備強化に関する緊急のお知らせ」にて参加者の皆さんにお願いしたとおり、一般参加者への手荷物確認と警備強化を行いました。警備員の数も増やし、警察にも警備にご協力いただきました。準備会スタッフには、休憩時間にも帽子・腕章の着用を指示し、息の抜けない3日間となりましたが、大きな事件もなく無事開催を終えることができました。これも、参加者・関係者の皆さんのご協力あっての結果であり、改めて感謝の意を表します。
 しかしながら、2日目閉会間際に当該作品が配置されるはずだったブロックにおいて、便乗犯と思われる悪質なイタズラ行為が確認されたことは、大変残念なことでした。これにより、準備会は、2日目夕方以降最大限の警戒態勢をしくことを余儀なくされました。
 今年に入っても、便乗犯・模倣犯と思われる悪質なイタズラ行為等により、他ジャンルのオンリー即売会を含め、いくつもの同人誌即売会の開催中止や、サークル参加・頒布見合わせが続いていますが、その一方で、従来通りの開催が行えた即売会もあり、正常化への道筋もつきつつあります。夏のコミケット84も、従来通り・通常通りの開催に向けて、関係各方面との調整を継続的に行っています。とはいえ、事態によっては、今後、参加者の皆さんにも再び何らかのご協力をお願いするかもしれませんが、コミケットの継続的な開催のためとご理解いただけると幸いです。

 さて、この冬は、雨に祟られたコミケとなりました。設営日の夕刻から降り出した雨は、1日目朝まで断続的に続き、一時天候は持ち直したものの、2日目は終日雨天となりました。ビッグサイトでの通常の展示会とは異なり、屋外もフルに活用するコミケットにとって、雨はまさしく鬼門です。雨の中待機列に並んでいた皆さんには、手荷物確認もあり、いろいろとご無理を強いることになり申し訳ありませんでした。コスプレエリアの大半も屋外のため、2日目の西地区アトリウム等にコスプレイヤーが集中し、大混雑となってしまいました。現在、雨天時のコスプレ対策については、会場と調整を行っています。
 そのコスプレですが、昨夏にエントランスプラザをコスプレエリアとしたのに続き、今回から東西のトラックヤード等もコスプレエリアとしました。急に場所が広くなった一方で、雨が降ったこともあり、コスプレイヤーの方々も少々戸惑われたかもしれません。試行錯誤がここしばらく続きますが、次回コミケット84のコスプレエリアについては、カタログや公式サイトの告知をみていただきたいと思います。
 この回からの新しい試みは、更衣室への先行入場の募集を行ったことです。一昨年からのコスプレの規制緩和の影響もあり、この一年、コミケットでのコスプレイヤーの数は増加傾向にあるわけですが、その結果、コスプレ広場の混雑が目立ってきました。上記のようにコスプレ広場をコスプレエリアと名称を変え、会場全域に拡げているのはその対策でもあります。同様に、コスプレイヤーの増加により、更衣室の待ち時間が長くなり、現在でも決して長いとは言えない実質のコスプレ時間を圧迫している状況が発生してもいます。この対応策として、コスプレイヤーの事前登録及び、抽選による更衣室への先行入場を検討しており、そのテストとして、コミケット83においては、女子更衣室について、人数を限って先行入場できるモニターを募集しました。この夏のコミケット84においては、男子更衣室も対象とし、人数を少し増やした形で、同様にモニター募集をしています。
 これらの取組は、後述するコミケWebカタログの新サービスとしてコミケット84から始まった『コミケコスプレコミュニティ(Comike Cosplay Community)』と連携する形で、コスプレイヤーの皆さんにコミケットのコスプレをより楽しんでもらえるよう進めていきたいと考えています。

 サークルの傾向としては、女性系では、ジャンル参加見合わせの影響が余りにも大きく、大きな変化はさほどありませんでした。その中では『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の公開が冬コミケ直前の11月半ば、しかも渚カヲルエピソードということもあり、このジャンルには混雑が集中しました。男性向では引き続き『アイドルマスター』に勢いがあり、サークル数をさらに増やしていたほか、『ソードアート・オンライン』にも人気が集まりました。
 コスプレROMに続き、準備会としても注意を払っている抱き枕での表現の問題ですが、こちらもこの一年間行ってきた準備会からのサークルの皆さんへの啓蒙もあり、販売停止の点数は着実に減っています。再三の繰り返しとなりますが、コミケットはサークルの皆さんに可能な限り自由な表現をしてもらいたいと思っていますが、法律に触れるような表現が認められるわけではありません。それぞれの表現については、充分な配慮をお願いします。
 サークルに関わる話題として今回一番大きいのは、冊子版カタログ、ROM版カタログに次いでスタートした『コミケWebカタログ(Comike Web Catalog)』でしょう。サークルの当落公開日に、全サークルの配置情報を全参加者が見ることができるというのはこれまでになかったことです。
 サークルの皆さんに設定していただければ、申込時(コミケットはサークル申込が他の即売会に比べ非常に早いのです)のサークルカットに加えて、最新のサークルカットをカラーでアップすることができますし、Twitter、pixiv、ニコニコ動画、同人誌委託書店や電子書籍サイトとの連携も可能です。当日の頒布物情報を書影つきで公開もできますし、サークルPRのテキストや画像もアップできます。利用者の皆さんは、検索やナビゲーションでサークルを調べて「お気に入り」登録することができますし、pixivやROMカタログとの間で「お気に入り」のやりとりができます。
 とはいえ、スマートフォンの普及による通信量の爆発的な増加により、当日のビッグサイト周辺の通信環境は、相変わらず厳しいものがあります。回線増強のための移動基地局は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、イーモバイルに加え、冬から新しくUQ WIMAXからも投入され、携帯各社が様々な対策を講じていますが、抜本的な問題解決には至っていません。Webカタログも、サーバの問題よりも、このネットワークの問題でつながらない恐れがあり、準備会からも「当日のWebカタログの利用は厳しい」旨のアナウンスを行いましたが、皆さんのお声を聞くに、「意外に繋がった」という意見が多かったように思います。
 コミケット83では、無料のβ版として公開された、『コミケWebカタログ』ですが、皆さんからは沢山のご意見をいただき、ありがとうございました。コミケット84においては、正式版として既に公開中です。サークルの皆さん、一般参加者の皆さん、それぞれの立場からご活用いただき、さらなる発展を目指したいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

 企業ブースは、この数年新規の出展希望が増えており、サークル参加よりも厳しい約2倍の抽選率となっています。アニメ制作会社さんの出展増加が特に目立つほか、コミケット83では、東宝、日本テレビの初出展もありました。昨夏のコミケット82のアフターレポートでも触れた一般企業の企業ブース参加という枠組みでは、日本マイクロソフトの出展もあり、好評だったようです。企業の皆さんには、できるだけ実際にコミケットに来ていただき、見ていただき、体験していただき、コミケットをもっとよく知っていただきたいと考えています。
 とはいえ、当日の企業ブースは大変な混雑となりました。特に、屋外展示場からパルテノン階段を上げての導線がスムーズに流れず、かなりの時間、待ち行列を停滞させることになり、ご迷惑をおかけしたことをお詫びします。もとより安全については、準備会として可能な限りの配慮を行っていますが、会場側からは西4階の混雑について、ご懸念をいただいている状況もあり、現在新しい対策に取り組んでいる最中です。
 その他の企業ブース以外の企業ということになりますと、昨夏のコミケット82に大トラブルを起こした日本郵便(JP)については、入念な打ち合わせと準備をもってこの冬に臨まれ、概ね滞りなく対応されたように思います。また、変わり種と言っては大変失礼ですが、設営に参加された方々と準備会スタッフに、レッドブルから試供品をいただきました。エナジードリンクのマーケティングの場所としては、コミケットの過酷さが適切、という判断がおありになったのかもしれませんが、ともかくも翼を授かった次第です。
 そして、3回目となった東京都及び千葉県の赤十字血液センターとのコラボ企画である献血応援イベントですが、今回も多くの参加者の皆さんのご協力をいただくことができ、年末年始の逼迫した輸血事情に貢献できたそうです。献血をされた皆さん、ポスターにご協力いただいた、アクアプラス、OVERDRIVE、NANOHA The MOVIE 2nd A's PROJECT、みなとそふと(五十音順)の各社さんには、改めてお礼を申し上げます。

 それにしても、ここ数年の同人誌界は、時が経つのが恐ろしく早いような気がします。2010年の東京都青少年条例改訂、2011年の東日本大震災、2012年の脅迫事件、2013年の児童ポルノ法改訂と、様々な出来事が立て続けに起きているせいでもあるのですが、正直慌ただしさは否めません。これに加えてコミケット的には、今年の後半になれば、次のコミケットスペシャルをそろそろ真剣に考え始めなければならないのですが、まだ形は見えていないのが正直なところです。準備会スタッフだけでなく、参加者の皆さんからも面白いアイディアをお寄せいただけると幸いです。

 内にも外にも様々な課題があることを認識しつつ、参加者の皆さんと一緒に、参加者の、参加者による、参加者のための『場』として、コミケットは少しずつ前に進んでいます。この場所で、参加者の皆さんは、自分の好きな作品に自分の好きな表現にきっと会えるはずですし、もしなかったら、自分でそれを創りだすこともできます。そして、自分の好きなものを、同じように好きだと思っている仲間に会える場所でもあります。
 ずいぶんと遅くなってしまったコミケット83アフターレポートですが、夏にまた、皆さんとお会いできるのを楽しみに、筆を置きたいと思います。
(2013年6月14日本文公開)

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