コミックマーケット84アフターレポート

会場
東京国際展示場東京ビッグサイト)全館

会期
2013年8月10日(土)〜12日(月)

サークル数
参加サークル数3万5千
申込サークル数5万1千


入場者数
10日(土)21万人
11日(日)21万人
12日(月)17万人


更衣室登録数
 男性女性
10日(土)1,3384,853
11日(日)1,9214,352
12日(月)1,8504,397


コミケット公式発行物


マスコミ取材
 コミックマーケット84取材申込一覧

(2013年8月20日データ部分公開)


 暑い夏でした。そして今年の猛暑は、残念ながらコミケットをよけては行きませんでした。暑さのあまりホール内に、かつて夏の晴海会場でしばしば見ることのできた「コミケ雲」が発生したのには、我々準備会としても驚きでした。
 ここ数年の猛暑対策として、開会時間前のビッグサイト通路内への前倒し入場、東駐車場一般参加者待機列でのケータリングカー設置による容易な水分補給、会場側に協力いただき設置したミスト扇風機によるクーリング、準備会スタッフや警備員によるアナウンスや巡回、カタログ・公式サイト・Twitterによる注意喚起と、準備会としても可能な限りの対応に努めてきましたが、ビッグサイトでの開催史上最も暑い夏となった今回、熱中症などで体調を崩される方も相当数となりました。このため、通常の救護室では場所が足りなくなり、具合の悪くなった方々に休んでいただくため、事前に定めた猛暑時の対策に従い、準備会スタッフの控室を数部屋充てて対応しました。とは言え、準備会ばかりでなく、参加者の皆さん一人一人が事前の備えをしてコミケットに臨んでいただいたこともあり、幸いにして大きな事故は起こりませんでした。

 こうした猛暑にも関わらず、入場者数は、1日目21万人、2日目21万人、3日目17万人の延べ59万人。この数字は、これまでの最高だった56万人を更新して過去最高となりました。これまでの金・土・日開催のお盆前の週の平日の金曜日は休みにくい、という声を数多くいただいていたので、この夏は、土・日・月開催で、お盆の週の月曜を開催日とする形を試みたのですが、この日程もやはり休みにくいというご意見が多数挙がっています。一般・サークルとも社会人の参加者が多数を占めるコミケットにおいて、全員が納得できる日程というのは困難ですが、夏・冬のバランスも考慮しつつ、今後とも曜日とジャンルの組み合わせを検討してきたいと考えています。
 サークルの傾向としては、女性系では『黒子のバスケ』がやはりにぎやかでした。加えて2年前の『TIGER & BUNNY』もそうでしたが、2月の夏コミ申込には間に合わない4月新番組アニメで大きくブレイクしたのが『進撃の巨人』。女性系各ジャンルで進撃本の新刊が目立つことになりました。男性系では、同様に6月ごろからあっという間に人気を拡大していったのが『艦隊これくしょん』。過去例を見ない速さでパロディでのブームも広がり、コミケ当日も多数の本が出ただけでなく、冬に向けても台風の目となる勢いが続いています。このほか『ラブライブ!』にも注目が集まりました。3日目のゲーム系ではこれまで混雑対応の観点から東123地区と東456地区に分割して配置していた東方Projectを、今回東123地区のみで配置しましたが、大きな混乱は起きませんでした。

 そして、コスプレは今回も新しい試みを行ないました。前回に続いて、更衣室への先行入場を実施したのに加えて、すべてのコスプレエリアにて一脚を使った撮影ができるようにした他、スペースに余裕のある屋上展示場と東地区トラックヤードのコスプレエリアで三脚・レフ板の使用を解禁しました。ビッグサイト全域に拡がったコスプレエリアですが、相変わらず庭園や屋外展示場など従来のコスプレエリアにコスプレイヤーが集中し、混雑が起こりがちな状況もあります。今回から始まった「コミケコスプレコミュニティ(コミコス)」の当日機能として、コスプレイヤーが事前に登録した当日参加予定のコスプレエリアを検索して、お気に入りのコスプレイヤーがどこにいるかを表示したり、各コスプレエリアに設置した定点カメラからコスプレエリアの状況をほぼリアルタイムでわかるようにしたり、更衣室やコスプレエリアの混雑状況を表示したりと、広い会場をうまく繋いでいけるような情報提供を始めています。

 また、昨冬の西4階企業ブースにおける混雑への対策として、今回は西4階への入場導線を大幅に変更しました。参加者の皆さんにはだいぶ遠回りをお願いすることになりましたが、ご協力ありがとうございました。おかげで、西4階の混雑緩和には成功したのですが、代わりに導線途中のエントランスホール出入口付近が混雑する結果となってしまいました。この冬に向けて現在改めて対策を考えていますが、会場側による混雑に対する懸念はより一層強まっている状況もあり、将来的には現状の枠組みを見直すことを含めての検討を同時並行で行なっています。
 企業ブースについては、今回も多数の会社に応募をいただき、相変わらず厳しい抽選率となりました。企業ブースは様々なプロモーションの場として広く注目されており、そのひとつの象徴的な出来事として、9月4日の日経流通新聞の1面に企業ブースに関する記事が大きく取り上げられたことを挙げたいと思います。サントリー、雪印メグミルクのような食品メーカー、まんが王国とっとり、京都国際マンガ・アニメフェアのような地方自治体が密接に関連しているイベントなど、多様な企業が出展する中、特に意外性を持って参加者の皆さんに受け止められたのは、日本外国映画著作権協会の「STOP!違法ダウンロード」キャンペーンだったかもしれません。当日はコミケ向けのプロモーションを展開しており、好評だったようです。

 繋がりやすさを競い合っている携帯電話各社は、今回もコミケットのために様々な手段を講じており、特にデータ通信については、ひと頃よりも安定している印象があります。後述するコミケWebカタログも実用レベルで利用可能でした。中でもKDDIは、移動基地局を「痛車」化したり、田中社長自らが対応の一番厳しいイベントとしてコミケットを挙げて積極的な対応をしていることをアピールしたりと、こちらもプロモーションの場としてコミケットを使っておられるようです。
 こうした中、今回最終日が平日開催ということもあり多くのTV局が訪れ、サーモグラフィを使ったりしての猛暑にまつわる撮影など、多様な取材が行われました。しかしながら、さすがに「救護室の中を撮りたい」というような取材は、お断りさせていただきました。
 一方で、コスプレ関係についてかなりよく調べた取材をされたTV番組もありましたが、取材に応じたコスプレイヤーの方々が他のコスプレイヤーなどの参加者から非難されて謝罪する騒ぎとなりました。準備会としては、こうした事態に当惑するとともに遺憾に思います。なぜなら、取材に応じたコスプレイヤーの方々は、カタログやコスプレ登録証に記載されているルールに則った行動をし、取材者に対してコスプレやコミケットの楽しさを伝えたにすぎません。コミケットはそもそも広く取材を受け入れており、参加者の皆さんにも取材を断る自由があるとお伝えする一方で、取材を通じて「同人活動やコミケットの面白さ等を伝えて下さい」とお願いもしています。これは、コミケットを続けて行くためには「コミケットを知ってもらい味方を増やしていく」必要があると考えているからです。過度に自粛を強いることは回り回って自らの首を絞めることにつながりかねない、ということを改めてここに記す次第です。

 その他、今回のコミケットにおける取り組みをいくつか列挙していきたいと思います。
 まず、コミケットカタログ冊子版において、「週刊少年サンデー」とコラボレーションして、東毅さんの『電波教師』でコミケを1話丸々描いた回「憧れのコミックマーケット」をそのまま再録しました。週刊マンガ雑誌とコミケットのコラボはかなり異色なことですが、この回がコミケットを詳しく描写しているだけでなく、サークル参加者の心情を丁寧に描いたすばらしい内容でしたので、準備会としては多くのコミケット参加者に読んでもらいたいと思っての企画でした。
 また、niconicoさんのご協力のもと、春に募集した「開会・閉会ジングル」「一斉点検ジングル」の採用作を夏コミ当日に場内放送しました。音量などの調節が当初うまく行かず、初回らしくバタバタしましたが、いかがだったでしょうか? まだ、耳慣れないとは思いますが、徐々に慣れていってください。
 そして、児童ポルノ禁止法における創作物規制を視野に入れた改定案、TPP協定交渉参加に伴う知的財産権の問題など、同人文化を取り巻く自由な表現について様々な動きがある中、『日本では何ができるのか――北米でのコミック表現規制とCBLDFの取組』と題して2日目の閉会後に急遽開催したのが、アメリカのコミック弁護基金(Comic Book Legal Defense Fund)のチャールズ・ブラウンスタイン氏の講演会でした。猛暑続きの夕方にも関わらず、立ち見を含め300人近い方々に参加いただき、質疑応答では活発な意見交換が行われました。このような講演会は折りを見て今後も行ないたいと考えています。
 昨冬のβ版から今回正式公開となったコミケWebカタログ。今回から企業ブースのページができ、サークル同様にお気に入り登録が可能になりました。また、要望の大変多かった印刷機能も追加され有料ユーザはこれを使うことができます。コミケWebカタログ自体のモバイル対応が開催ギリギリになってしまったのと、開発者登録した方によるコミケWebカタログ対応アプリの開発も遅れてしまったため、スマートフォンやタブレットでの利用を期待されていた方には少々残念な状況となってしまったのは申し訳ありませんでした。現在冬に向けて、更なるシステムのブラッシュアップをCircle.msと話し合っています。

 最後に、この冬のコミケット85にサークル申込をされた方々は既にご覧になったと思いますが、コミケット84で販売した「コミックマーケット85サークル参加申込書セット」に付属している『コミケットマニュアル』を一新しました。この『マニュアル』は、コミケットの理念や成り立ち、サークル参加に当たっての当日までの流れやルール、コミケット準備会の説明など、サークル参加をするに当たり、知っておいて欲しいことをまとめたものです。これまでの『マニュアル』は、都度修正を施してはいましたが、米沢前代表時代の内容をほぼそのまま引き継いだものでした。ご存じの通り米沢はコミケットの創立メンバーの一人でもありましたので、この文章では、「なぜコミケットが生まれたのか?」という説明に力点が置かれています。これはこれで大事なことですが、時代背景などの違いもあり、2013年の現在から見るに、いささかわかりにくい文章になっていたのも否めません。そして、コミケットが誕生してもうすぐ40年になる道程を考えると、今、共同代表としてコミケットを共にとり行う参加者の皆さんと共有すべきは、「なぜコミケットがこれまで続いてきたのか? なぜこれからもコミケットを続けるのか?」という「継続」の考え方なのではないかという判断の下、今回の刷新にいたりました。コミックマーケットの理念や考え方の部分については、英語版と合わせて近日中に公式Webサイトにて公開を予定していますので、まだお読みでない方はご一読いただけると幸いです。よろしくお願いします。
(2013年10月23日本文公開)

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