コミケットプレス33 P12〜P13「緊急特集 東京都青少年条例 再度都議会に提出」

 前号のプレスで緊急特集として取り上げた「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(以下、青少年条例)ですが、六月に改正案が否決されて以降も石原都知事が再提出に意欲を示してきました。その後、石原都知事が新たな改正案を十一月三十日開会の東京都議会に再提出、十二月五日現在で審議中の状態です。新たな改正案では、前回の改正案で焦点となった「非実在青少年」という文言が表面的には削除されていますが、むしろ創作物に対する規制の範囲を拡大する内容です。この特集では前回も述べた青少年条例の概要を簡単におさらいして、今回の改正案のポイントと影響を説明することにします。

おさらい:青少年条例とはなにか?

 同人誌の立場から単純にいうと、青少年条例とは「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発する」図書を青少年(十八歳未満)に販売したり、閲覧させたりしないように努めてね、という条例です。具体的には、著しくこうした要件に当てはまり都知事に不健全図書として指定されたもの(指定図書)、図書の発行者自らが要件に該当すると認め表示したもの(表示図書)については、販売者は個別包装や区分陳列で、青少年に閲覧させないように、という条例です。もちろん、「性的感情を刺激」の部分にはいわゆる「エロ」だけではなく「やおい」や「BL」も対象です。

前回の改正案と何が違うのか?

今回の改正案のポイントをざっくり言うと「フィルタリングの推進」「刑罰法規等に触れる表現規制」「ジュニアアイドル規制」という3点です。全てが重要な論点なのですが、今回は同人誌に最も関係の深いと思われる2点目に絞って図に示します。
(略)
ということで、前回の改正案における非実在青少年の性交等描写に対する規制が、いわば"非実在性犯罪"や"非実在近親姦"の描写に対する規制に置き換わっています。この「刑罰法規」には18歳未満とのみだりな性交等を禁止する、いわゆる淫行条例等も含まれるため、前回の非実在青少年規制も包含して、より規制の内容を拡大するものになっています。また、創作物が表現する時代や地域等により制度や規範は全く異なるにも係わらず、現在の刑罰法規を基準に線引きを行うことも不自然と言わざるを得ません。さらに「不当に賛美・誇張したもの」という要件が何を指すのかも曖昧であり、条例の恣意的な運用や濫用につながる可能性もあります。

私は関係ない、という人……本当?

 これは青少年条例における規制ですから「自分は18歳以上だから今まで通り読めるよ」とか、「うちのサークルは成年マークを付けているから関係ないよ」と考える人もいるかもしれません。しかし、前回の非実在青少年に対する規制の議論と同じく、実際の犯罪そのものではなく、犯罪を描いた表現――創作物・フィクションの規制に前例を作ることは、児童ポルノ法の対象拡大を含む創作物への法的規制や、不健全指定や業界団体への勧告を避けるための過剰な自主規制につながる可能性があります。表現に携わる者として、今回の改正案が無関係ということは決してありません。

これからどうなっていきそうか?

 重大な影響を及ぼす条例にも係わらず、公開の時期は東京都議会の直前で、十分な審議が尽くされたとはいえない状況です。コミケットが所属する全国同人誌即売会も十二月一日に反対の声明を公表、十二月六日には緊急シンポジウムも開催されます。アンケート等でも関心の声を多数頂きましたが、今後も継続的な注視をお願いします。

注:本稿は内容は十二月五日時点の情報で執筆しました。

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